リソース・ベースト・ビューの

競争戦略

(外部環境と内部資源を結びつける)


DHBRの記事を素材にした「示唆・学び」の共創・創発の場

【新訳】

外部環境と内部資源を結びつける

リソース・ベースト・ビューの競争戦略

Competing on Resources

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ハーバード・ビジネススクール非常勤教授 デイビット J. コリス David J. Collis

1976年にケンブリッジ大学で修士号を得た後、ハーバード・ビジネススクールで78年にMBA、86年にDBAを取得。また78年から82年まで、ボストンコンサルティンググループのロンドン支社に在籍していた。およそ20年間、ハーバ一ド・ビジネススクールで教授を務めた後、現在に至る。なお、本橋発表当時はハーバード・ビジネススクール准教授。

 

ハーバード・ビジネススクール教授 シンシア A. モンゴメリー Cynthia A. < xml="true" ns="urn:schemas-microsoft-com:office:smarttags" prefix="st1" namespace="">Montgomery

パーデュー大学で博士号を取得後、ミシガン大学スティーブンM.ロス・スクール・オブ・ビジネス、ノースウェスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメントを経て、1989年からハーバード・ビジネススクールで教鞭を執る。

 

2人の共著書にCorporate Strategy: Resources and the Scope of the Firm, Richard D. Irwin, 1997.(邦訳『資源ベースの経営戦略論』東洋経済新報社、2004)などがある。

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産業組織論を援用したマイケルE.ポーターの「ファイブ・フォース」モデル

外部環境に重きを置いた戦略論であったが、

1980年代後半から90年代初めにかけて現れた

コア・コンピタンス論、ケイパビリティ論は企業内部にこそ

競争優位は存在する、というものであった。

本稿で論じられている「リソース・ベースト・ビュー」(RBV)

この対極にある2つのアプローチを結びつけるものだ。

企業固有の資源やコンピタンスの重要性を認識する一方で、

これを競争環境のなかに位置づけるのである。

シャープ゚、ディズニー、ニューウェルなどの成功企業の

事例をひも解きながら、有益な資源の条件、

それを戦略に落とし込む方策などについて解説する。

なお、本論文が最初に翻訳掲載されたのは

DHBR19967月号である。

 

 

1. 新しい戦略フレームワーク「ソース・ベースト・ビュー」

 

1980年代半ばまで、我々は戦略について知らないことはないと思い込んでいた。

ポートフォリオ・プランニング、経験曲線効果、PIMS(市場戦略の収益影響度分析)、マイケル・E・ポーターのファイブ・フォース・モデル等々----

このような分析ツールのおかげで、事業戦略と企業戦略の両方について厳密性と正当性のお墨つきが与えられたのである。

 

 ゼネラル・エレクトリック(GE)のような先進的な企業では、戦略プランニングの価値がますます信奉されるようになり、巨大な本社部門を抱えるまでになった。

また、戦略系コンサルティング会社が急速に拡大し、広くその名を知られるようになった。

 

 しかしその後、この様相は一変した。80年代の環境変化によって戦略立案者の一群は一掃され、ほとんど姿を消した。

そして、戦略論はさまざまな批判の矢面に立たされるようになった。

 

 事業部門のレベルではライン・マネジャーたちはグローバル競争と技術変革のスピードに追いつけず、四苦八苦している。

市場の動きが加速度的に速くなっているにもかかわらず、戦略プランニングは十年一日のごとく昔日のままであり、こちらについては「遅すぎる」と、現場は不満を訴える。

 

 かつての戦略論は、全社レベルでも深刻な問題を引き起こしている。

80年代に入ると、ボストンコンサルティンググループ(BCG)が開発した「BCGマトリックス」(成長性と市場シェアのマトリックス)に従って各事業部門を振り分け、これがみごとはまっている企業では、かえって価値が損なわれていることがわかってきた

(囲み「『負け犬』と『金のなる木』の行く末やいかに」を参照)。

 

 屈強と思われた大企業の多くが、社内階層が少なく、より小回りの利くライバルに脅かされ、IBM、ディジタル・イクイップメント、ゼネラルモーターズ、ウェスチングハウスなどは立ち直れないほどの打撃を被り、またGEやABBなどは、劇的な改革や組織再編を余儀なくされた。

80年代の終わりまでには、多角化企業はその存在意義を正当化するのがますます難しくなった。

 

 戦略プランニングの正当性を疑問視する、これらさまざまな批判に応え、一連の新しい戦略アプローチが提案されたのは自然の成り行きといえる。

その多くは、企業内部に目を向けたものであった。

 

 トム・ピーターズとロバート・ウォーターマンによる『エクセレント・カンパニー』がその先鞭をつけ、TQM(総合的品質管理)が注目され、その一環としての戦略、ビジネスプロセス・リエンジニアリング、コア・コンピタンス、ケイパビリティ競争、そして学習する組織など、さまざまなアプローチが生まれた。

 

 それぞれの手法には見るべき役割があったとはいえ、これらがこれまでの経営理論をどのように進化させ、あるいは打破するものなのか、一つとして定かではなかった。

結局、これらのアプローチは戦略論をいっそう混乱させ、ビジネス・リーダーたちを悩ませただけであった。

 

 この状況を打開できそうなフレームワークがいま、戦略論の分野から現れている。

このアプローチは経済学に基づくもので、ダイナミックな競争環境において、自社資源が業績をどのように牽引するのかを分析するものである。

経営研究者たちはこれを総称して「リソース・ベースト・ビュー」(RBV)と呼んでいる

図表1「資源の価値を左右するものは何か」を参照)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

RBVは、企業内部における経営資源の分析----80年代半ば以降、マネジメント研究の大家はここにしか目を向けていない----と、産業や競争環境という外部分析----それ以前の戦略アプローチにおける中核であった----を組み合わせたものである。

つまり、RBVは、既存の2大アプローチを否定するものではなく、内部と外部の視点を融合することで、これらを進化させたものといえる。

 

 この手法を使えば、ある企業が競合他社より収益性が高いのはなぜか、コア・コンピタンスというアイデアをどのように実践すればよいのか、多角化戦略をうまく機能させるにはどうすればよいのかといったことを、経営の視点から具体的に説明できるようになる。

したがって90年代において、RBVは80年代の産業分析と同じくらい、戦略論に大きな影響を及ぼし、また重要なものとなるだろう

(囲み「戦略論の変遷」を参照)。

 

 RBVは、企業を異なる有形無形の資産とケイパビリティの集合体と考える。

当然、似たような企業は2つとしてない。

なぜなら、それぞれが異なる経験を経て、異なる資産や技術を積み上げ、異なる企業文化をつくり上げているからである。

 

 企業がいかに効率的かつ効果的に機能できるかは、これら企業内部の資産とケイパビリティによる。

この論理を突き詰めれば、つまり自社の事業と戦略にとって最良かつ最適な資源を積み上げた企業こそ、最も成功に近いことになる。

ただし、有益な資源はさまざまなかたちで存在するため、コア・コンピタンスやケイパビリティ論の狭い概念では見過ごされてしまうこともある。

 

 このような資源が有形な場合もある。

家のなかに引かれた電話線を例に考えてみよう。

電話会社とケーブル会社はどちらも、高速通信に必要なインフラをすでに備えているため、次世代の双方向マルチメディアが普及した社会でも成功を収められる可能性が高い。

 

 一方、有益な資源が、たとえばブランドや技術ノウハウといった無形の場合もある。

ウォルト・ディズニーの名は広く市民権を得ていることで、おもちゃ、テーマパーク、映像といった幅広い事業で成功を収めている。

また、シャープはそのフラット・パネル・ディスプレー(FPD)技術のおかげで、全世界で70億ドル規模に上る液晶(LCD)市場を支配することができた。

 

 有益な資源が、社内のルーチンやプロセス、文化に埋め込まれている組織ケイパビリティという場合もある。

日本の自動車メーカーであれば、まず低コストのリーン生産方式、次に高水準の品質管理、そして迅速な製品開発といったケイパビリティを備えている。

 

 このようなケイパビリティは長い年月をかけて築き上げられたもので、それゆえに、何の変哲もないどこにでもある材料から優れた製品をつくり出し、グローバル市場でも売れる製品の開発に成功したといえるだろう。

 

 企業の競争優位とは、その源泉が何であれ、つまるところ、有益な資源を持ちうるかどうか次第であり、これを利用して競合他社より効率的に、かつ低コストで事業活動を実行することにほかならない。

 

 たとえば、マークス・アンド・スペンサーはさまざまな資源を所有しているからこそ、イギリス小売業界において競争優位を確立することに成功した

図表2「マークス・アンド・スペンサーのRBV」を参照)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このことは、事業部門の単位でも、一企業グループの単位にもいえることだが、有益な資源は、たとえばR&Dなど特定の機能であったり、あるいは資産であったり、またコーポレート・ブランドといった場合もある。

したがって、優れた業績を上げるには、「際立った競争優位」を備えた資源を開発し、検討に検討を重ねた戦略のなかで位置づけられなければならない。

 

 

2. 競争力ある資源の特性

 

 ある資源だけを取り上げて、その価値を評価することはできない。

なぜなら、その価値は、市場要因との関連性のなかで決まるものだからだ。

ある業界、あるタイミングでは有益な資源でも、業界やタイミングが違えば、その価値は変わってしまうかもしれない。

 

 たとえば、ロブスターのブランド化は過去に何度か試されているが、いまのところだれも成功に至っていない。

PC業界でもブランドが重要だった時期があったが、IBMが高い授業料を支払って学んだように、これもいまではさほど重要ではない。

 

 RBVは、組織内部のケイパビリティ(その企業の強み)と外部環境(市場の需要や競争他社の動向)を一つに結びつけるものである。

こう申し上げると、資源ベース競争とは単純なものに聞こえるかもしれない。

しかし現実には、自社の資源を特定し、客観的に評価することはそれほど簡単ではない。

 

 有益な資源を評価するに当たり、ともすればあいまいで主観的なプロセスになりがちだが、ここに何らかの規律を持ち込むことで、RBVは大きなパワーを発揮することだろう。

 

 資源が戦略を奏功させる礎として機能しうるには、一連の外部基準を満たす必要がある。

そのなかには、ほとんどのマネジャーが直感的あるいは無意識に理解できる、わかりやすいものもある。

たとえば、有益な資源は、顧客が妥当な値段でほしいと思う製品の開発に貢献するものでなければならないといったことだ。

 

 しかし、その他の基準はもっとわかりにくく、それゆえ往々にして誤解されたり、間違った使い方をされたりしている。

そのせいで、戦略が機能不全に陥ることも少なくない

(訳注:なお、以下に挙げる資源の特性については、148ページの囲み「資源の『5つの基準』を検証する」において筆者たちが今日的視点からコメントしている)。

 

2.1 模倣困難性:この資源を模倣する、あるいは再現することは難しいか。

 

模倣困難性は、それ自体競争を制限するため、ひるがえってこれが価値創造のカギとなる。

資源を真似したり、再現したりするのが難しければ、そこから生まれる利益はより持続的なものになろう。

逆に、競合他社が簡単に複製できる資源では、その価値は一時的なものでしかない。

とはいえ、この基準を厳格に適用できるマネジャーは少なく、模倣可能な資源をベースにして長期戦略を策定しがちである。

 

 アメリカで最初に近代化を果たした食肉加工業者IBP(かつてのアイオワ・ビーフ・プロセッサーズ、現タイソン・フレッシュ・ミーツ)は、一連の資産(畜産の盛んな州に建設した自動化工場)とケイパビリティ(低コストによる肉牛の解体)を築き上げ、70年代にはその利益率は1.3%であった。

しかし80年代の終わりには、コンアグラ・フーズや穀物メジャーのカーギルがこれらの資源をそっくり真似したため、IBPの利益率は0.4%にまで落ち込んだ。

 

 もちろん、永遠に模倣不可能な資源など存在しない。

ライバルは遅かれ早かれ、有益な資源のほとんどをコピーする術を見つけることだろう。

しかし、以下に挙げる4つの特徴のどれか一つでも備えた資源を核にした戦略を打ち出せれば、ライバルの機先を制し、しばらくの間は利益を維持できるだろう。

 

 第一は「物理的な独自性」であり、これは文字どおり複製しようのないものである。

地の利に優れた不動産、天然資源の採掘権、あるいはメルクなどが所有している医薬品の特許などは、真似しようにもできないものだ。

自社資源の多くがこの特徴を備えているとつい考えがちだが、よくよく見てみると、そのような資源はめったにないことに気づくだろう。

 

 第二に、第一の特徴に比べて、経済学者が「経路依存性」と呼ぶ特徴を備えている資源はさらに模倣が難しい。

簡単に言うと、このような資源は企業が経験を蓄積する過程で獲得されたノウハウであり、その企業固有のもの、他に類を見ないものである。

したがって、探して買い取れば解決するものではない。

このような資源は時間をかけて積み上げられるものであり、その過程を早送りすることはできないのだ。

 

 ベビー・フードの代名詞といえるガーバー・プロダクトの事業内容を真似ることは可能だろう。

しかし、ガーバーと同じようなブランド・ロイヤルティを構築するには、間違いなく長い年月を要する。

たとえば競合他社が何億ドルもの資金を投じて、自社のベビー・フードを宣伝しようと、消費者がガーバー・ブランドに寄せるような信頼を獲得することはできない。

このようなブランド・イメージは、ガーバーが実践してきたように、長きにわたり製品を安定的に提供し続けることによってしか築くことができないからである。

 

 また、その資源が研究に研究を重ねた末の産物であれば、短期集中型のR&Dプログラムでは、卓越した技術の複製はまず不可能だ。

数多くの研究者が同時並行司に研究に当たったとしても、ボトルネックが正しい順序で解消されない限り、研究期間は短縮されないからだ。

すべてが資源の独自性を守るようにできているといえよう。

 

 三つ目に、資源と企業の成功との「因果関係があいまい」な場合、このような資源は模倣しにくい。潜在的なライバルは、有益な資源が何なのか、あるいはこれをどのように再生産すればよいのか、正確にわからなければ、手も足も出ない。

 

 ラバーメイド(現ニューウェル・ラバーメイド)がプラスチック製品分野で継続的に成功を収めている理由は何だろうか。

およそありえない理由をいくつも並べることはできる。

これまで数多くのライバルたちがしてきたように、イノベーションの方程式を見つけ出そうと試みることもできる。

しかし結局のところ、ラバーメイドの成功をそっくりそのまま真似することはできないのである。

 

 因果関係があいまいな資源は、組織ケイパビリティである場合が多い。

この種の資源は、人間関係と複雑に絡み合って存在しており、時には特定個人に依存していることも少なくない。

 

 コンチネンタル航空とユナイテッド航空がサウスウエスト航空の低コスト戦略に追随する場合、最大の難関は、機材や航路、折り返しスピードを真似ることではないだろう。

これらはだれの目にも明らかであり、だからこそ簡単に模倣できる。

 

 しかし、サウスウエスト航空の文化である楽しさ、家族的な雰囲気、倹約精神、集中主義などは、なかなか真似のできないものだ。

なぜなら、これが正確には何なのか、またどのように形成されてきたのか、はっきりとわからないからである。

 

 最後に、ライバルを出し抜くために、資産に巨額投資する、すなわち「経済的障壁」を築くことで、資源の模倣を防ぐこともできる。

ただし、市場の潜在余力が限られている場合、ライバルはその資源を模倣できたにしても、それをしないだろう。

 

 規模の経済を働かせ、特定の市場に特化した大規模な設備投資が戦略の要となる場合、この経済的障壁が考えられる。

たとえば、フロート板ガラス(ガラスを板状にする際、溶融したガラスを溶融した金属錫で冷却して製造される板ガラス)工場の場合、少なくともその一つの工場だけで多くの市場に供給できなければ、効率性を確保できない。

 

 このような設備は他の目的には利用できない。

したがって、この市場で長期的に活動することの証拠となり、同様の設備投資によって対抗しようと考えるライバルに戦闘姿勢を示すことになる。

 

2社が競い合うと、互いに収益性を維持できないくらい市場規模が小さい場合、先手を打たれた企業が相手の資源を模倣するとは考えにくい。

まさに、いま東欧でこの現象が起こっている。

多くの企業が近代化を急ぐなか、その国で最初にフロート・ガラスエ場を建設した企業は、ライバルの脅威にさらされずに済む可能性が高いといえる。

 

2.2 持続性:この資源の寿命はどれくらいか。

 

資源の寿命が長ければ長いほど、その価値は高い。

持続性は模倣困難性と同じく、その資源が長期にわたり競争優位を支えられるか否かを判断する基準である。

長期にわたり安定している産業もあるとはいえ、ほとんどの産業は変化が速く、資源の価値はまたたく間に低減してしまうことを現代のマネジャーたちはわかっている。

 

 ディズニー・ブランドは、ウォルト・ディズニーが66年に亡くなり、マイケル・アイズナーとその経営陣が就任する84年までのおよそ20年間、ほとんど何のてこ入れもされなかったにもかかわらず、生き延びることができた。

 

 これとは対照的に、半導体チップの世代が進化するたびに、異なる企業が台頭してきたことからも明らかなように、変化の激しい業界では、しばしば技術ノウハウが急速に陳腐化する。

 

 経済学者のジョゼフ・A・シュンペーターは30年代に、早くもこの現象に気づいていた。

彼は、一連のイノベーションによって先行者が市場を支配し、莫大な利益を得ると述べた。

しかし、これら有益な資源は早晩模倣されるか、より優れた次世代イノベーションに追い越されてしまうため、このような先行者利得は一時的なものにすぎない。

 

 大企業や産業そのものでさえ「創造的破壊の嵐」によって一瞬のうちに駆逐されうるというシュンペーターの言葉は、現代のマネジャーが感じているプレッシャーそのものである。

自社のコア・コンピタンスが永続すると仮定し、それに頼るのは危険である。

ほとんどの資源が寿命に限りがあり、一時的な利益しか生み出すことができないからだ。

 

2.3 帰属性:資源がもたらす価値を享受するのはだれか。

 

 資源を所有する企業が、それがもたらす利益のすべてを享受できるとは限らない。

実際、資源がもたらす価値は、常にさまざまなプレーヤー、たとえば顧客、代理店、サプライヤー、そして従業員の間の力関係によって、その配分が決まる。

 

 これは、LBO(被買収企業の資産やキヤツシュフローを担保に資金調達して買収する方法)企業で起こっていることを見れば、明らかである。

LBO企業にとって最も重要な資源は、投資銀行業界におけるコネと人脈だ。

ただしこの資源は、その案件に関わる個人に帰属するものであって、LBO企業に帰属するものではない。

 

 このような人材は、みずからの資源がもたらす利益からより多くの分け前を得るため、独立してみずからLBOファンドを設立したり、他社に移籍したりすることも可能で、実際そうしている。

つまり、企業以外に帰属している資源に頼って戦略を構築した場合、必ずしも利益にあずかれるとは限らないのだ。

 

2.4 代替可能性:独自の資源が、まったく異なる資源に取って代わられる可能性はあるか。

 

 ポーターが79年、「ファイブ・フォース・モデル」を発表して以来、ありとあらゆる戦略家が代替財の潜在的影響力について注目するようになった。

たとえば、鉄鋼業界における巨大市場であるビール缶は過去20年の間に、鉄からアルミニウムヘと変わった。

 

 RBVのフレームワークでは、この重要な問いを、財やサービスを提供する能力を支えている資源のレベルで考える。

次に挙げる例を考えてみよう。

 

80年代初頭、ピープル・エクスプレス航空は、低価格戦略で大手航空会社に対抗した。

創業者のドナルド・C・バールは、独自のノンフリル・サービス(無償サービスの廃止や簡略化)と格安運賃を実現する仕組みを整え、低コスト戦略を追求した。

 

 大手航空会社は同じ道を歩むことはできなかったものの、異なる資源、つまりコンピュータ予約システムやイールド・マネジメント技術(注5)を活用することによって、同程度の低価格運賃を提供できるようになった。

このように資源が代替可能だったため、ピープル・エクスプレスは97年、ついに廃業に追いやられ、業界から姿を消すことになった。

 

2.5 競争優位:自社の資源は、他社のそれと比べて本当に優れているか。

 

 自社資源を評価するに当たって、マネジャーが犯す最大の過ちは、他社の資源と比較するのを怠ることである。

あまりにも多くの場合、コア・コンピタンスは、けっして落第点がつかない「自画自賛」の活動になっている。

つまり社内一と呼ばれる分野はどのような企業にもあるもので、それをコア・コンピタンスと称しているだけなのだ。

 

 しかし残念ながら、コア・コンピタンスとは、社内の活動のなかで何がいちばん得意なのかといった身内の評価によるものであってはならない。

コア・コンピタンスは、自社がライバルより優れている分野はどこか、厳密に評価する外部分析によるべきであり、その意味では

「(他社と比較して)傑出した(ディスティンクティブ)コンピタンス」

という表現がよりしっくりくる。

 

 消費財メーカーのなかで、いったいどれほど多くの企業が「自社のコア・コンピタンスはマス・マーケティング・スキルである」と考えているだろうか。

これらの企業はもれなくマーケティング・スキルに優れているかもしれない。

しかし、このコア・コンビタンスに頼った戦略を展開した場合、自社以上にこのスキルに優れているライバルは間違いなく同じ戦略を選択するため、すぐさま行き詰まってしまうことだろう。

 

 コア・コンピタンスというあいまいな言葉に惑わされないためには、自社資源を分解してみるとよい。

たとえば、マス・マーケティング・スキルというカテゴリーはあまりにも広すぎる。

しかしこのスキルは、「効果的なブランド・マネジメント」といったサブ・カテゴリーに分割可能で、さらにその下に「製品ラインの展開力」や「費用対効果の高いクーポン戦略」などに分割できる。

 

 ここまで分解して、初めて自社の独自性がどこにあるのかを把握できる。

また、これらに競争優位が備わっているかどうかのデータを分析して、初めて測定可能となる。

 

 クラフト・ゼネラル・フーズ(現クラフト・フーズ)(注6)とユニリーバを比べて、どちらがマス・マーケティング・スキルに優れているかを判断できる人がいるだろうか。

もちろん、答えは否である。

しかし、どちらが製品ラインの展開力に優れているかであれば、定量的な答えを出すことができる。

 

 自社資源を分解することで、真に類稀なる資源が特定されるだけでなく、それを利用して何かできるのかも見えてこよう。

自社のコア・コンピタンスについて、あれこれ文言を並べただけでは、それをどのように利用すればよいのか、よくわからないという企業ばかりではないだろうか。

 

 たとえば、ある医療診断装置メーカーは、器具の「操作性」が自社のコア・コンピタンスであると定義した。

しかし、この定義は直感的にはピンと来るが、いったいどのような機能を意味するのかを知るにはあいまいすぎた。

 

 これをさらに深く理解するために分解を試みた結果、ある重要なポイントに気づいた。

同社製の器具が操作性に優れているのは、器具とそれを操作する人のインターフェース設計が競合他社よりも優れていたからだった。

 

 このことに気づいたこの医療診断装置メーカーは、この価値あるケイパビリティをより強化するために、人間工学の専門家を雇い、医療分野のなかでも急成長市場である開業医のセグメントに参入した。

同社の資源はここで、専門技術者だけでなく素人でも操作できるというメリットのおかげで、真の競争優位を生み出した。

 

 このようにコア・コンピタンスを分解してみると、競争優位を秘めた資源を特定することができる。

しかしその一方、有益な資源はスキルの集合体であり、個々のスキルにはさしたる特長がなく、これらすべてを組み合わせて初めて優位性が発揮されるという場合もある。

 

 ハネウエルの産業用自動制御システムは大成功を収めているが、言い換えれば、同社には何らかの優位性がある証拠といえる。

ただし、部品の一つひとつやソフトウエアが最高水準であるとは限らない。

 

 各資源の加重平均、すなわち個々の資源はいちばんではないが、平均すると、どのライバルよりも優れている場合、システム・インテグレーション能力に競争優位があると考えられる。

 

 いずれにしろ、自社の重要資源を評価するに当たっては、外部の客観データに基づいて判断するよう、肝に銘じなければならない。

しかし、コア・コンピタンスは直感的に判断されやすく、正しい答えに到達するうえで欠かせない綿密な調査や詳細な分析を怠る傾向を見られる。

 

 

3. いかにRBVを導入するか

 

 以上、5つの基準を満たした資源を踏まえたうえで、戦略プランニングすべきである。

このような資源のなかでも最も重要なものはたいてい無形であり、それゆえ、組織文化、技術、変革リーダーといった、いわゆる「ソフト資産」に注目したアプローチが重要に

なってくる。

 

 これら5つの基準は、市場要因がどのように資源の価値を決定するのかを説明するものであり、これらの基準を用いることで、マネジャーは社内と社外の両方に目を向けるようになる。

 

 理想的には、競争力と価値に優れた資源によって、有利な市場ポジションを確保すべきだが、ほとんどの企業がそうではない。

またこれらの企業では、さまざまな資源がごちゃ混ぜになっており、そこには素晴らしいものもあれば、ありふれたものもあり、また頑ななIBMのメインフレーム文化のように、自分たちの足かせにしかならないものも混じっている。

社内資源のほとんどは、社外の客観的基準を満たすことができないというのが厳しい現実である。

 

 幸運にも、他社にはない資産やケイパビリティを備えた企業でさえ、それで安泰というわけにはいかない。

価値ある資源が他の資源と結びつき、それが正しく機能するような企業方針や事業活動に組み込まれて、初めて独自の市場ポジションを獲得できる。ライバルにも何らかのコア・コンピタンスがあることを念頭に置くべきである。

 

 戦略について考える際、先を読むことが欠かせない。

まさしく卓越したコア・コンピタンスを持っている企業でも、時間の経過やライバルの攻撃によって、その価値は低減していくことをけっして忘れてはならない。

 

 ゼロックスの例を思い出してみよう。

ゼロックスにとって「失われた10年」といわれる70年代、同社は自分たちの複写技術は模倣不可能であると信じ込んでいた。

そしてゼロックスが安穏としている間に、キヤノンがゼロックスを退け、コピー機市場のリーダーとなった。

 

 変化し続けるこの世界にあって、次世代競争に打ち勝つ体質をつくるには、常に前線に立ち、気を張っている必要がある。

すなわち、現在いかに優れた資源に恵まれていようとも、継続的に自社資源に投資し、その価値を向上させ、魅力的な業界で競争優位を確立するために、これをテコにして新規参入戦略を効果的に推し進めていくことが求められる

(訳注:なお、リソース・べースト・ビューの現在の意義については、154ページの囲み「リソース・ベースト・ビューの今日的視点」で筆者がコメントしている)。

 

3.1 資源に投資する

 

 資源の価値は、例外なく時間と共に低下していく。

したがって、効果的な戦略を展開するには、価値ある資源を維持し構築するための継続的投資が欠かせない。

アイズナーがディズニーのCEOに就任して真っ先に取り組んだのが、アニメーションヘの投資を復活させることだった。

 

 彼は5000万ドルをかけて『ロジャー・ラビット』を制作し、アニメ映画ではこれが久しぶりのヒット作となった。

その後、同社のアニメ映画の公開本数は4倍になり、『美女と野獣』『アラジン』『ライオンキング』などのヒット作を立て続けに出している。

 

 マークス・アンド・スペンサーは同じく、小売業界----同社唯一の事業である----における自社のポジションを定期的に確認し、その競争優位を維持するために巨額の投資を傾けてきた。

このイギリス企業は80年代初頭、数10億ドルを投じて、店舗の改装、市内でも流行の店が集まる地域への新規出店、仕入れと配送のシステムの更新を実施した。

 

 これとは対照的に、アメリカの小売業、シアーズ・ローバックは、保険、不動産、株式仲介などの事業に進出し、多角化を図ったが、モールヘの出店、専門店の台頭といった小売業界の変化についていくことができなかった。

このように、戦略的資源に再投資することの重要性は言うまでもなかろう。

 

 コア・コンピタンス論の最大の貢献は、事業部制を敷いている企業では各事業部の利益を最大化することを優先するあまり、資源への投資がおろそかになりがちであると警鐘を鳴らした点である。

つまり、その企業にとっての至宝を守るには、本社部門が決定的な役割を果たさなければならないことを、コア・コンピタンス論は指摘したのである。

 

 この役割を果たすために、重要な資源の育成・開発を担当する役員を正式に設置する場合もある。

多角化メーカーのクーパー・インダストリーズでは、製造のベスト・プラクティスを社内にくまなく広めるために「マニュファクチャリング・サービス・グループ」を設置した。

 

 同グループは被買収企業を「クーパー化」するために、その生産設備を合理化し改良してきた。

このグループを率いたジョゼフ・R・コッポラは大変なやり手であり、93年には、アメリカ最大の産業用機器メーカー、ギディングス・アンド・ルイス(現MAGギディングス・アンド・ルイス)にCEOとして引き抜かれた。

 

 同様に、クーパース・アンド・ライブランド(現プライスウォーターハウスクーパース)などのプロフェッショナル・サービス会社では、重要なケイパビリティ、たとえば顧客リレーションシップ管理、社員教育、知識の向上といった分野を専門に担当するシニア・パートナーを置いている。

 

 価値ある資源は概して、部門レベルでどうこうできるものではなく、したがってだれかが全社レベルで管理していないと、事業部門はそこへの投資を怠ったり、他部門の資源にただ乗りしたりする。

 

 同時に、産業の魅力度を左右する競争力学をきちんと検証しないまま、コア・コンピタンスに投資するのは危険だ。

市場環境に注意を払わなければ、投資対効果の低い資源に大金を投じてしまうという愚を犯しかねない。

 

 マスコ・コーポレーションはまさにこの典型である。この会社は金属加工産業でコア・コンピタンスを築き、これを生かせそうな業界へ多角化を図った。

しかし残念ながら、この戦略は会社の予想よりも低いリターンしか生み出さなかった。

 

 なぜだろう。ファイブ・フォース分析をやっていれば、マスコが参入した産業構造そのものに問題があることは明らかだったはずだ。

すなわち、スイッチング・コストはさほど高くなかったため顧客は価格に敏感で、しかも参入障壁は低く、サプライヤーが強い力を握っていた。

 

 マスコの技術力は優れていたが、このような産業構造ゆえに、高いリターンを実現することはかなわなかった。

この目的を果たすには、新技術を開発し、より魅力的な産業に参入するほかなかったのである。

 

 同様に、競合他社への注意を怠っていると、いかに効果的な資源ベース戦略を立案しても、そこから得られた利益は、競合他社との資源争奪戦によって吹き飛んでしまうことだろう。

 

 マルチメディア業界にすれば、家庭内ケーブルはまさしく競争優位の源泉と考えられた。

そこでタイムワーナーはこの家庭内ケーブルという資源をめぐって、その価値を理解しているライバルとの争奪戦に備えるために、中規模のケーブル・システム事業者を買収するためだけに何10億ドルという投資に踏み切った。

 

 ただし最終的には、だれも莫大な投資に見合うリターンを得ることはできないかもしれない。

これは、資源を購入する場合だけでなく、ライバルたちが同時にコア・コンピタンスを社内開発している場合にもいえる。

 

3.2 資源の価値を高める

 

 自社には類稀なる資源などないという場合、どうしたものだろう。

競争優位の基準を厳格に当てはめて自社資源を評価した場合、たいていこのような結果となる。

また、重要な自社資源がライバルによって真似されたり、代替されたりした場合はどうだろう。

 

 あるいは、先のマスコのように、魅力に欠ける産業においてのみ、自社資源の価値が発揮される場合には、いかに効率的に運用しても、財務的なリターンはいつまでたってもぱっとしないだろう。

 

 このようなケースでは、いやほとんどのケースがそうなのだが、したがって、その資源の量と質、また競争上のポジションを高めることにたえず努め、資源の価値の目減りを防がなければならない。

 

 資源の価値を高めるには、既存の得意分野から一段上へ移行する必要がある。

それは、さまざまな方法で実現することができる。

 

 第一は、新たな資源を追加する方法で、これはインテルが自社の技術資源に「インテル・インサイド」というブランドを冠することで付加価値を創造した手法である。

 

 第二は、既存のケイパビリティに代替する資源への転換を図ることである。

AT&Tはマルチメディア用のインフラを構築し、物理的な既存設備、すなわち電話網はかつての独自性も重要性も失われていった。

 

 最後に、より魅力的な産業に参入するために、資源をグレード・アップさせる方法もある。

たとえば、アメリカの電炉系製鉄会社ニューコアは、競争が激しく、利益率が低い川下事業である棒鋼のような汎用製品から、より差別化された川上事業である薄スラブ連鋳鋼板といった大型特殊鋼への転換を図っている。

 

 資源の価値を高めることに成功した企業では、長い時間をかけて徐々に新しいコンピタンスを積み上げていくケースがよく見られる。

シャープの例は、技術と製品が相乗効果を生み出す好循環、つまり日本人が言うところの「シーズとニーズのマッチング」がどのようにつくり出されたのかをよく表している。

 

50年代後半、シャープはテレビとラジオの組み立てメーカーにすぎず、日本の家電メーカーのなかでも二流の地位に甘んじていた。

ここから脱皮するため、創案者の早川徳次はイノベーションの重要性を常に強調し、社内に中央研究所を開いた。

 

 通商産業省(現経済産業省)によってコンピュータの設計を差し止められた時も、シャープ(当時は早川電機工業)は限られた技術を利用して、64年に世界初の電子式卓上計算機〈CS―10A〉を世に送り出した。

この事業での地位を強化するため、シャープは特殊半導体の製造罷門を後方統合し、新しい事業領域であるLCD技術に莫大な投資を行った。

 

 シャープのLCD技術への賭けはまさに的中し、この技術に基づいて電子システム手帳など、数々の新製品を開発することに成功した。

その後、卓越したディスプレー技術のおかげで、カムコーダーといった、以前は苦戦を強いられた事業でも、シャープは競争優位を発揮できるようになった。

シャープが開発したブレークスルー商品〈ビューカム〉は、92年の発売から半年の間に、目杢巾場で2割のシェアを獲得するに至った。

 

 技術を開発する、あるいは改良を加える、また他市場に新規参入する、あるいは攻撃を仕かけるといった具合に、それぞれのステージで、シャープは新しい挑戦を続けた。

挑戦に打ち勝つたびに、その技術、流通、そして組織ケイパビリティの資源は改善されていった。

またそれが、シャープにとって市場拡大への新しい道を切り開くことになった。

今日、シャープはLCD市場を独占しており、家電市場における一大勢力になっている。

 

 もう一つの好例は、先のクーパーである。

点火プラグに代わって燃料噴射装置が主流になりつつあるなか、クーパーは89年、チャンピオン・スパーク・プラグの買収計画を正当化する必要に迫られ、自社資源を活用すればチャンピオンのポジションを向上できることをその理由とした。

 

 クーパーは、レンチの〈クレセント〉、やすりの〈ニコルソン〉、採掘装置の〈ガーナーデンバー〉などの製品分野で、これまでに何度も業界内のポジションを改善させてきた経験があったからである。

 

 しかし、会長兼CEOのロバート・シジックいわく、

「最終的な決め手は、クーパーにとって将来必要になるであろう決定的なスキル、つまり国際的な製造業をマネジメントする能力が白分たちに欠けていることでした」。

 

 チャンピオンは海外に数多くの工場を持っており、同社を買収することは、クーパーにすれば、グローバルなマネジメント・ケイパビリティを獲得する千載一遇のチャンスであり、またシジックにすれば、チャンピオンの買収はこの資源をグレード・アップする有力な手段だったのである。

 

 クーパーの歴史を振り返ってみれば、組織としてあえて難易度の高い課題に何度も挑戦することで、そのケイパビリティを意図的に、しかも段階的に高めていったことが見て取れる。

 

3.3 資源を活用する

 

企業戦略は、自社資源をフル活用することで、これら資源を生かせる市場において競争優位を確立する、あるいは他の市場に新規参入することで、資源の価値を向上させることを目標とすべきである。

もしくは、クーパーのチャンピオン買収のように、この両方を兼ね備えていることが望ましい。

 

 もしそうでなければ、創業者の死後、ディズニーで起こったように、市場から過小評価されることになる。

価値ある自社資源を十分活用していなかったことが原因で、ディズニーは敵対的買収の脅威にさらされた。

アイズナーたちは新経営陣として、これに対応するため、ホテル、小売り、出版といった分野に事業領域を拡大した。

 

 つまり、企業戦略を効果的に実行するには、自社の事業領域をたえず再評価することが欠かせないといえる。

したがって戦略立案者は、価値ある自社資源はどの市場に適応しうるのか、その範囲について自問自答しなければならない。

 

 その答えは、時には大幅に異なるだろう。

なぜなら、個々の資源はそれぞれ特性が違っており、代替性がきわめて高いもの(現金、機械装置、ゼネラル・マネジメントのスキルなど)から、かなり特殊なもの(特定の科学領域での専門性、門外不出の製法など)まで多岐にわたるからである。

 

 特殊な資源は競争優位を維持するうえで決定的な役割を果たすことが多い半面、その高い特殊性ゆえ、環境が変わると、とたんに価値が落ちてしまう。

たとえば、自動車やエネルギー産業において、ロイヤル・ダッチ・シェルのブランドがどれほど高く評価されていようと、他の業界ではあまり通用しないだろう。

一方、代替性の高い資源は広範囲にわたってさまざまな市場に応用できるが、競争優位の源泉となることはあまりない。

 

 RBVの考え方に照らせば、過去の多角化がなぜ好結果を残せなかったのかがわかるだろう。

また、資源の多面的活用によって成長を目指す場合、犯しがちで高くつく、3つの戦略上の過ちが見えてくる。

 

 第一に、特定の資産やケイパビリテイの適用範囲を過大評価する傾向が見られる。

皮肉なことに、価値ある資源は模倣しにくいため、当該企業ですら、新たに参入する市場において、この資源を再現することが難しかったりする。

 

 マークス・アンド・スペンサーは、本国イギリスでは大成功を収めているにもかかわらず、北米でその資源をうまく活用することができず、何度も失敗を繰り返している。

これは、競争優位を確立するうえで事業環境がいかに重要であるかをなおざりにした典型例である。

 

 このケースでは、経路依存性と因果関係のあいまいさという、2つの要因が原因と考えられる。

マークス・アンド・スペンサーがイギリスで成功を収められているのは、100年の伝統に裏づけられた信頼のほか、国内のサプライチェーンを効果的に管理するスキルやコネクションがあるからだ。

イギリス国内のライバルがこれら一巡の優位性を模倣できないように、マークス・アンド・スペンサーも他の市場に新規参入し、新たなライバルと戦う場合には、同じく苦戦を強いられる。

 

 第二に、自分たちは収益性の高い産業で勝負できる力があると過信しがちである。

このような産業は通常、参入障壁が高く、ライバルの数が限られるからこそ、魅力的なのである。

 

 しかし、参入障壁は資源障壁でもある。

ライバルたちがこの市場への参入は一筋縄にいかないと感じるのは、必要な資源を蓄積することが難しいからなのだ。

もしそれが簡単にできるならば、多くのライバルがこのチャンスに群がり、そうなれば当該産業の収益性も低下することだろう。

 

 しかし多くのマネジャーが、自社資源と産業の収益性の関係を理解しないまま、その産業での成功を最終的に左右する要因は何かを考えもせず、参入障壁を飛び越えられると思い込む。

 

 たとえば、フィリップモリス(現在アルトリア・グループ傘下)がソフト・ドリンク市場に参入し、フランチャイズ化された流通網を管理するに当たり、大変な苦労を強いられた。

この事業は何年も不振が続いたため、フィリップモリスは撤退を決め、86年に〈セブンアップ〉の販売権をペプシコに売却した。

 

 多角化で陥りがちな過ちの第三は、それほど独自性の高くない資源、たとえばリーン生産方式といったものを、新規市場における競争優位の源泉と思い込み、その市場固有の競争力学を無視してしまうことである。

 

 クライスラーはこの教訓を学ぶことになった。

自社の設計能力と生産技術が航空業界でも通用すると信じて疑わず、85年にガルフストリーム・エアロスペース(現在ゼネラル・ダイナミックス傘下)を買収したが、その5年後、コア事業に再び専念するために、この会社を手放した。

 

 だれもが陥りがちな落とし穴はあるものの、ディズニーのように自社資源をうまく活用できれば、その見返りは大きい。

ニューウェル・カンパニー(現ニューウェル・ラバーメイド)は一連のケイパビリティを築き上げ、それをテコにさまざまな産業用製品を開発し、不動の地位を確立した驚くべきケースである。

 

 ニューウェルは、67年にCEOに就任したダニエル・C・ファーガソンが新たな戦略を描き出すまで、カーテン周りの装飾品を製造する一中小企業にすぎなかった。

同社はその後、さまざまな種類の家庭用品やオフィス用品を大量生産することに専念し、大規模小売店を通じて、これらを販売した。

 

 ニューウェルはまた、次々と企業を買収し、これらの企業はいずれもニューウェルの組織ケイパビリティの恩恵にあずかった。

つまり、効率的なコントロール・システム、大型ディスカウント小売店とコンピュータでつないだペーパーレス請求システムや自動在庫管理、そして定番商品を「グッド、ベター、ベスト」の三段階に分けることで、小売店が単一ブランドで数種類の品質や値段の商品を品ぞろえできるといった独特の手法などである。

その一方、ニューウェルはこれら一連の買収によって、自社の強みを強化するチャンスを得た。

 

 ニューウェルはいまや、カーテン関連の装飾品、調理器具、ガラス食器、塗装ブラシやオフィス用品のトップ企業であり、その利益成長率は年15%を誇る。

この多角化企業がその他大勢に比べて際立っているのは、自社資源を利用して、事業部門レベルでの競争優位を確立・維持している点である。

 

 ただしニューウェルも、事業展開している市場が魅力的だからこそ、うまくいっていることは否定しがたい。

 

 消費者にすれば、ニューウェル商品はすべて購買頻度が少なく、また安価である。

消費者のほとんどが、グラスを1セット買うだけのためにあれこれ調べ回ったりしないし、平均的な市場価格がどのくらいかもピンとこないはずだ。

3ドル99セントの真鍮のカーテン・ハンガーが高すぎるかどうかなど、いったいだれにわかるだろう。

 

 すなわちニューウェルの資源は、このように魅力的な産業のなかで活用されているからこそ、その価値がいっそう高まるといえる。

 

 

 コア・コンピタンスに基づいて戦略を立案するにしろ、学習する組織を確立するにしろ、変革プロセスの最中にあるにしろ、これらのコンセプトはすべて、独自の自社資源とケイパビリテイを開発する手段として位置づけられるべきである。

 

 またその際、産業構造や競争状況について冷静に見つめ、社内資源を社外基準に照らして厳格に評価することを忘れてはならない。

ケイパビリティと競争環境という両方の洞察を踏まえた戦略は、経営論の流行りすたりに左右されることなく、持続性の高い論理でできている。

 

 この手法が報われることは、ニューウェル、クーパー、ディズニー、シャープといった企業の卓越した業績を見れば一目瞭然である。

これらの企業は意図してRBV戦略を実践したわけではなかったかもしれないが、この理論の本質とそれがもたらす見返りを確実に理解している。

     (HBR199578月号より)

 

【注】

1)

Thomas J. Peters and Robert H. WatermanJr.In Search of  Excellence: Lessons from Americas Best Run Companies, HarperCollins, 1982.

(邦訳は1983年、講談社より。また2003年、英治出版より復刻版が発行されている)は、成長し続ける超優良企業の8つの条件を分析した、ビジネス書の世界的なベストセラー。

2)

リソース・ベースト・ビューについては、以下のように、洞察あふれる論文が多数執筆されている。

Birger Wernerfelt “A Resource-Based view of the Firm,” Strategic Management Journal, Sep.-Oct.1984, p.171.

Jay B. Barney, “Strategic Factor Markets: ExpectationsLuck and Business Strategy,” Management Science, 0ct.1986. p.1231.

Richard P. Rumelt”Theory, Strategy, and Entrepreneurship,” in The Competitive Challenge: Strategies for Industrial Innovation and Renewal, Ballinger, 1987, p.137.

Ingemar Dierickx and Karel Cool, “Asset Stock Accumulation and Sustainability of Competitive Advantage,” Management Science, Dec.1989,p. 1504.

Kathleen R. Conner”A Historical Comparison of Resource-Based Theory and Five Schools of Thought Within Industrial Organization Economics: Do We Have a New Theory of the Firm?.” Journal of Management, Mar. 1991, p.21.

Raphael Amit and Paul J. H. Schoemaker, “Strategic Assets and Organizational Rent,” Strategic Management Journal, Jan. 1993, p.33.

Margarett A. Peteraf, “The Cornerstones of Competitive Advantage: A Resource-Based View,” Strategic Management Journal, Mar. 1993, P.179.

3)

今日、この2つの視点を統合するものとして最も注目を集めているのが、

Michael E. Porter, Competitive Advantage: Creating and Sustaining Superior Performance, Free Press, 1985.

(邦訳『競争優位の戦略』ダイヤモンド社)、ならびに

Michael E. Porter, “Towards a Dynamic Theory of Strategy,” Strategic Management Journal, Winter 1991, p.95.である。

4)

これらのアイデアは『マネジメント・サイエンス』誌に掲載された2論文で初めて紹介された。

Ingemar Dierickx and Karel Cool, “Asset Stock Accumulation and Sustainability of Competitive Advantage,” Dec.1989,p. 1504.

Jay B. Barney, “Asset Stocks and Competitive Advantage,” Dec. 1989, p.1512.

5)

yield management skill。需要予測に基づき、最適のタイミング、最適の価格で、適切な顧客層に商品を販売し、利益を最大化する手法。運輸業やホテルなど、固定費の大きい業界で使われる例が多い。

6)

1988年、フィリップモリス(現在アルトリア・グループの傘下)がクラフトを買収し、翌年同社の傘下にあったゼネラル・フーズと合併し、クラフト・ゼネラル・フーズとなる。95年、社名を現在のクラフト・フーズに変更する。

 

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「負け犬」と「金のなる木」の行く末やいかに

 

1960年代後半から70年代前半にかけて、マネジメントの専門性がもたらす競争優位は幅広い事業領域に適用できると考えられていた。

多くの企業はこれを信じて、事業領域を拡大していった。

 

 分権化され、限定があるとはいえ厳しく財務コントロールした企業が主にM&Aを手段に、関連分野のみならず非関連分野へと多角化していった。

そして、こうしたコングロマリットは小さな経済圏を形成していった。

当時、企業の事業範囲はどこまでも際限なく拡大できるかに思えた。

 

73年に第一次石油ショックが起こり、業績が落ち込むなか、企業経営者はこの状況にどのように対応すべきなのかについて、何のアドバイスも得られなかった。

この空白を埋めてくれたのが、ボストンコンサルティンググループ(BCG)の「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」(PPM)である。

 

 いまでは有名になった「BCGマトリックス」(成長性と市場シェアのマトリックス)のおかげで、企業経営者はさまざまな事業部門を管理するツールをようやく手にした。

 

 この単純なマトリックスは、事業部門----以降SBU(戦略事業ユニット)と呼ばれるようになる----を業界の成長性とそのSBUの相対的競争優位に基づいて四つの象限に分類する。

各象限における戦略は、次のようにはっきりしていた。

 

①「金のなる木」を維持する。

②「負け犬」からは、撤退するか、撤底的にしぼり取る。

③金のなる木から得たキャッシュフローを「問題児」に投資し、次世代の「花形」事業を育てる。

④花形事業の市場シェアを市場成長が止まるまで伸ばし続けて、金のなる木に育てる。

 

 こうした単純な処方箋によって、企業経営者は、戦略によって達成すべきこと、つまり事業ポートフォリオのバランスを図り、各事業部門を管理し、適切に資源配分する方法について、何がしかの知識を得られるようになった。

 

 ただし、このPPMにも問題があった。

すなわち、半導体からハンマーまで、多岐にわたる事業部門すべてに共通する価値がどのように生み出されるのかについて言及していなかったのである。

各事業部門における唯一の接点は、キャッシュフローだけだった。

事業部門間のシナジーが多角化企業における価値創造の核心であるとわかるのは、後のことである。

 

 またBCGマトリックスは、資本が潤沢であることを前提にしていたことも問題だった。

つまり、企業がその内部で生み出されたキャッシュフローを全額使い切ること、そして資本市場から資金調達できないことを前提としていたのである。

80年代の資本市場を見れば、この前提が間違いだったことがわかる。

 

 そのうえBCGマトリックスは、当該企業が有する競争優位を、その保有コストとの対比で評価できなかった。

80年代、多くの企業がインフラに巨額の投資を行ったが、事業部門レベルで生み出された利益はわずかなものだった。

 

 同時期、市場ではM&Aが過熱し、株主価値に注目が集まるようになった。

そして、模範的なポートフォリオ経営と思われていた多くの企業が、このなかで解体されていった。

 

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「戦略論の変遷」

 

 戦略論の分野は、元ハーバード・ビジネススクール名誉教授の故ケネス・R・アンドルーズがその著書『経営戦略論』(注1)で最初に提起したフレームワークを核として、その周辺に形成されてきた。

 

 アンドルーズは、戦略を「企業が活動する環境(市場機会:opportunitiesや脅威:threats)と企業にできること(組織の強み:strengthsと弱み:weaknesses)を最適に組み合わせたもの」と定義している。

 

 この「SWOT」と呼ばれるフレームワークは、発表された当初から注目を集めたが、この定義を構成する2つの側面、すなわち外部環境と内部資源をシステマチックに評価する手法については、ほとんど触れていなかった。

 

 最初のブレークスルーになったのは、マイケル・E・ポーターが著した『競争の戦略』(注2)である。

ポーターの研究は、産業組織論のSCP(産業構造、行動、成果)パラダイムに基づいている。

 

 ポーター理論の核になるのは、産業構造が競争状況を左右し、企業行動の方向性が決定される、すなわちこれが戦略であるという考え方だ。

 

 ここで最も重要なのは、構造要因(ポーターはこれを「ファイブ・フォース」と表現した)によって、その産業の平均的な収益性が決まり、これが個別企業の収益性を決定的に左右するとしたことである。

 

 この分析によって、「正しい産業」を選択し、そこで最も魅力的な競争侵位を確保することに焦点が当てられる。

このモデルは個別企業の特質を無視するものではないにしろ、明らかに産業構造に注目したものであったことは間違いない。

 

 その後、コア・コンピタンスとケイバビリティに基づく競争戦略論が登場したことで、振り子は大きく反対側に振れ、企業の外部から内部に注目が移った。

これらの手法は企業内部に蓄積されたスキルと集合的な学習経験、またそれを活用するマネジメント能力の重要性に焦点を当てていた。

 

 この考え方は、競争優位の源泉が企業内部にあること、そして現時点において企業が所有している資源のレベルによって選択しうる戦略が限定されることを前提としている。

ここでは、外部環境についてほとんど顧みられず、産業や競合他社について分析・学習したことは人々の脳裏からすっかり消え去ったかに見えた。

 

 ここにリソース・ベースト・ビュー(RVB)が出現したことで、これら対極にあった2つのアプローチがつながり、アンドルーズのフレームワークで描かれた概念が具体化された。

 

 このRVBはケイパビリティ・アプローチと同じく、企業固有の資源やコンピタンスの重要性を認識する一方、これを競争環境のなかに位置づけるというアプローチである。

 

 RBVには、産業分析に共通するもう一つの重要な特徴がある。それは、これが経済理論に基づいている点だ。

このアプローチは、ケイパビリティと資源を競争優位の源泉としてとらえるが、それは次の三つの市場要因の相互関係によって左右されると考える。

 

需要:顧客ニーズを満たしているか、競争相手より優れているか。

稀少性:模倣可能か、代替可能か、持続的か。

帰属性:利益はだれのものか。

 

 本稿で述べている5つの基準は、これらの経済学的要件を、より具体的に、かつ行動に結びつくようにまとめ直したものである。

 

【注】

1)

Kenneth R. Andrews, The Concept of Corporate Strategy, Dow Jones-Irwin, 1971. 邦訳は1991年、産業能率大学出版部より。

 

2)

Michael E. Porter, Competitive Strategy: Techniques for Analyzing Industries and Competitors, Free Press, 1980. 邦訳は1980年、ダイヤモンド社より。

 

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資源の「5つの基準」を検証する

 

①模倣困難性

 

 トヨタ生産方式はさまざまな要素からなる複雑なシステムであり、10年をゆうに超える長きにわたり、トヨタとその製品を他の自動車メーカーから差別化してきた。

同社の最も重要な集合的資源は、ケイパビリティとプロセスのシステムであり、この両方が一つになって最新の生産プロセスによる製品品質のグローバル・スタンダードが出来上がったのである。

 

 数多くの企業がトヨタを模倣しようと試み、自分たちのビジネスモデルにトヨタのシステムの要素を取り込もうと相当な努力を重ねている。

 

 たとえば、GEをはるかに上回るリターンを上げている製造およびテクノロジー分野の多角的企業であるダナハーは、トヨタを見習ってその手法の多くを自社のビジネスシステムに取り入れている。

 

 しかし、トヨタの優位性のカギは、いまだかつてだれもそのモデル全体を模倣することができないという点にある。

特に、自動車産業の主要ライバル企業は、この方向性へ踏み出すのに、かなりの後れを取っている。

 

②持続性

 

 持続性というと、土地のような有形の試算を思い浮かべるかもしれないが、数世代にわたって利益の重要な源泉となる資源にはさまざまな種類のものがある。

 

 〈オレオ〉クッキーを思い出してほしい。

1912年の発売以来、〈オレオ〉は3620億個を売り上げている。

RJRナビスコのCEOだったF・ロス・ジョンソンは、この会社がKKRに買収された時、こう述べた。

「どこかの天才が〈オレオ〉を発明した。

我々はその遺産を食い潰しているだけだ」

 

③帰属性

 

 企業は自分たち----社員でも、サプライターでも、顧客でもない----がコントロールできる資源を中心に戦略を立てるよう気をつけなければならない。

非常に著名な新興市場ファンド・マネジャーであるグレッグ・コフィーは、20084月、ロンドンを拠点とするヘッジ・ファンドのGLGパートナーズを去り、自身の会社を設立した。

 

 業界関係者は、コフィー・の独立でGLGから五〇億ドル近い運用資産が流出し、これによりGLGの規模と影響力は著しく低下すると見ている。

 

④代替可能性

 

 リアル店舗を競争優位の基本に据えている本屋のボーダーズは、代替の経営資源(この場合はオンライン書店)が業界にもたらす「創造的破壊」を示す顕著な例である。

新しい資源が、重要な資源の価値を壊し、業界のルールを根本的に変えることもありうる。

 

40億ドルの年間売上げを誇っていた、実店舗販売で全米第二位の書店は、倒産の危機に瀕しており、現在身売り中である。

 

⑤競争優位性

 

 数十年にわたり、アニメーション映画ではディズニーの一人勝ち状態だった。

同社がアニメーションの技術を進化させたことで業界全体の水準が上がり、そのマーケティング手腕と伝統のブランド力で消費者を非常にうまく囲い込み、ディズニー映画への興味とロイヤリティを確立した。

 

 この領域におけるディズニーの成功は明らかで、2001年までに71100万ドルの純利益を稼ぎ出した『ライオンキング』に代表される大ヒットアニメ映画を次々と生み出していた。

 

 だが、この10年間、アニメ映画におけるディズニーの優位性は、手描きのアニメーションの代わりにコンピュータ・グラフィックを駆使して一連のオリジナル映画をつくったピクサーに脅かされていた。

 

 初期の頃には、ディズニーが、大ヒットした『トイ・ストーリー』を合むピクサー映画の配給を行っていたが、この契約期間が終了すると、2006年にディズニーは74億ドルをはたいてピクサーを買収することになった。

 

 ピクサーは、クリエイティブなストーリー制作者と新技術に精通したグラフィック・アーティストからなる素晴らしいチームを築き上げ、これが偉大なアニメ映画を制作するディズニーのケイパビリティを凌駕する資源となったのである。

    (Harvard Business Online より)

 

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リソース・ペースト・ビューの今日的な視点

 

(1)事業ユニットと企業戦略を結ぶ架け橋

 

1995年に我々が“Competing on Resources”を発表してからというもの、組織のリソース・ベースト・ビューがますます注目を集めるようになった。

資源は、戦略的非対称性の要となるものである。

 

 言い換えれば、ある企業が業界のなかで独自の存在である、すなわち際立った特徴を持ち競争優位性があるとすれば、それはその企業が、稀少かつ顧客にとって重要な資源を備えているからにほかならない。

 

 資源は差別化のメカニズム、すなわち後発企業にとって成功を収めた先発企業を模倣しがたいものとする障壁なのである。

 

 我々は、企業規模の大小にかかわらず、こうした競争が何度も繰り返されることに目を向けてきたわけだが、次のポイントは特に注目すべきものと思われる。

 

 我々が“Competing on Resources”で、あるいは98年にHBRに寄稿した“Creating Corporate Advantage”において指摘し、また経営の現場でもこれまで実証されてきたことは何だろうか。

それは、資源が事業ユニットの競争優位と本社レベルの企業優位を結びつける重要な架け橋になる、ということである。

 

 資源は、企業全体が部分の集合より確実に大きなものになるための、カギになる要素である。

 

 これらの資源には、いくらでも代替可能なものもあれば(たとえば、プライベー卜・エクイティ運用会社の核心部分である、案件の仕組みづくりや資金調達の経験など)、きわめて特殊なものもある(大手電力会社における原子力工学のケイパビリティなど)。

前者の資源はさまざまな業種に広く応用できるだろうが、後者の応用範囲は格段に狭いといえよう。

 

(2)資源のシステム

 

 多くの企業において、最も資重な資源は、単独の資源でもいくつかの資源でもなく、資源の集合体、すなわち企業が積み上げたトータルなシステムによる優位性ともいえる「スーパー・リソース」であり、つまりこれが独自のビジネスモデルといえるのである。

 

 優位性のあるシステムがしっかりと構築されていれば、その構成要素である個々の資源は、ますます価値の高いものになる。

模倣者にとっては、このシステムの複雑さがいっそうの障壁となり、難易度が高まるのである。

 

 このような戦略を模倣するにはライバル企業は1つか2つの資源を複製するだけでなく、さまざまな資源を結ぶ複雑な関係性までをも複製しなければならない。

 

(3)GMとフオード

 

 黎明期の自動車業界でヘンリー・フォードが台頭してきた時、ゼネラルモーターズ(GM)の経営者であったアルフレッドースローンは、このことを認識していたに違いない。

シンプルなデザイン、大量生産、大規模販売網、そして低価格がしっかりと結びついたフォード・モーターのシステム----しかもそのすべてが非常に高レベルで実践されていた----のため、フオードを直接脅かすものは何もないとさえ思えたほどだった。

 

 スローンは、フォードと同じ土俵で競争しても勝ち目はないとわかっていたため、製品の差別化、毎年のモデル・チェンジ、際立ったブランド、消費者とディーラーヘの融資、そしてインパクトの強い広告訴求を軸にした戦略を展開した。

 

 その結果、GMは、フォードやその他のライバルが半世紀以上にわたってどうしても模倣できなかったシステムとしての優位性と一連の組織ケイパビリティを築き上げたのである。

 

 大規模スーパーのターゲットがウォルマートに対して自社のポジショニングを格上げしようとする試みは、GMと同じような逆転劇を生むことになるかもしれない。

 

(4)人材は、あなたの会社にとって最も貴重な資源か

 

 最近のエグゼクティブはよく、自分たちにとって最も貴重な資源は人材だときっぱり「断言」する。

 

 だが、この言葉を耳にすると、我々はエグゼクティブにもっと深く考えるよう促している。

人材活用に成功するために企業が果たす役割を十分に理解してほしいからだ。

他社よりここで働くほうが、社員にとって生産性が上がるよう、企業はどんな努力をしているだろうか。

 

 企業は人材を「所有」できないが、社員の生産性を上げる資源を「所有」できる。

たとえば、卓越したパフォーマンスを引き出し、それに報いる企業文化、チーム作業を円滑にするような組織構造、あるいはデザイナーが次々と革新的な製品を生み出せるような比類なき開発プロセスといったものがそれに当たるだろう。

企業に帰属するこうした資源こそ、企業として誇るべきものなのである。

 

(5)視点の融合

 

 リソース・ベースの考え方と、産業分析や競争的ポジショニングが、あたかも競合する理論であるかのように、この2つを対極のものととらえる学者もいる。

 

 こうした考えは真実からほど遠く、また企業管理職にとって何の助けにもならない。

この2つの視点は互いに補いこそすれ、競い合うものではない。2つの視点を融合することは、市場の現実に私たちの目を向けさせるだけでなく、企業独自の特質やその選択肢をよりよく理解するための一助となるのである。

     (Harvard Business online より)

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